英文契約締結の際の注意点

契約締結交渉時の留意点

契約締結交渉では、取引内容すなわち契約条件を当事者間で確定することを目指します。その過程である程度の時間がかかることは仕方のないことですが、契約条件の中ではさほど時間をかけなくても合意に至る部分と、どうしても当事者間の溝が埋まらず平行線をたどってしまう部分に分かれるのが通常です。長期間にわたって交渉を重ねたけれども、重要な部分がどうしても合意に至らず、交渉が決裂することもないわけではないでしょう。
このような性格を持つ契約交渉の過程において、争点を明確化させるためには、取りあえず合意に至った部分だけでも文書化しておくことが有用です。
交渉内容を記した議事録(Minutes)や、中間的な合意に至った場合にはLOIやMOU等を作成しておくことが有用です。仮にこうした予備的合意書でなくとも、社内的な報告書や稟議書の形でも文書化して残しておくべきです。これにより、明確に争点を絞った交渉を行うことが可能となり、膠着状態(デッドロック)に陥った交渉の打開策を冷静に検討することもできるでしょう。デッドロックに陥った場合には、争点を明確にした上で時間をおいて再交渉する、ある点では当方が譲歩する代わりに、他の点では相手方に譲歩を促す、交渉担当者のそれぞれの上位者の直接交渉をする等の方法により、解決策を見出していくほかありません。

尚、交渉の前提として、最初の提案から最大限譲歩したものを出すべきではないと言えます。最初から最大限譲歩した提案をしてしまうと、当然のことながら、後でそれ以上の譲歩をしようがないからです。交渉が進む中で、相手方の反応を見定めながら、交渉の一つのカードとして、次第に当方の要求を譲歩していくことを戦略的に考えるべきです。

通常、契約書のドラフトは自社側で準備した方が有利となります。
すなわち、一般的には、自社に有利な内容を盛り込んだ契約書フォームを相手方に素早く送りつけて、契約交渉の主導権を握るべきです。そのためには、あらかじめ自社に有利な各種契約書フォームを準備しておくべきであり、少なくともすぐに用意できるような体制を整えておくべきです。少しでも自社に有利な土俵で契約交渉を進めることが重要だからです。逆に、相手方から先に提示された契約書文案をよく検討もしないで、そのまま署名してしまうと、相手方ばかりに有利な契約内容となっている場合がほとんどと言っても過言ではありません。
よって、相手方に契約書原案を作成させる場合には、少なくとも、その内容をあらゆる角度から詳細に検討して、自社に不利な条項が盛り込まれていないか慎重にチェックすべきです。社内において、そうした契約書の審査能力を十分に磨き、普段から体制を整えておく必要があるといえます。
この点、欧米企業との売買契約等は、基本的に、注文書や契約書の表面に記載の条件のみで決まるわけではなく、取引の詳細に関するterms & conditionsが細かい文字で契約の裏面に書かれていたり、別紙やウェブサイトを参照しなければならない形式になっています。

これらは裏面約款と呼ばれますが、何か問題が起きた場合に参照すべき定め(危険負担、債務不履行時の救済方法など)は、この裏面約款に定められていることが多いため、契約締結時には、取引の価格や数量など専ら表面に記載されている事項のみならず、裏面約款についてもきちんとチェックすることが重要です。
通常、当該裏面約款は定型フォームになっており、当該フォームを保有する会社にとって徹底的に有利になるよう作成されています。したがって、契約の相手方が契約書ドラフトを用意する場合には、必要に応じて交渉のうえ、自社にとって不利な条項の削除・変更を要求する必要があります。

欧米企業にとって、契約締結交渉が1回のやりとりで契約の成立に至ることは稀であり、申込みと承諾が一致するまで何回も、申込み、対案の申込み(counter offer)、変更承諾などが行われながら交渉が進められていくのが、むしろ一般的です。このような「書式合戦」は"Battle of Forms"と呼称されますが、日本企業としても、熾烈な駆け引きを常とする欧米企業と契約交渉を行う以上は、こうした契約締結交渉の駆け引きに慣れることが必要となってきます。